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「『和名類聚抄』の郷名比定地による〈千年村〉データベースの扱いについて」の版間の差分

 
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本プロジェクトは、千年以上にわたり、度重なる自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が持続的に営まれてきた集落・地域を〈千年村〉と規定し、その収集、調査、公開、顕彰、交流のプラットフォームです。ここでは、その収集にあたり、その基礎として当運動体が作成した『和名類聚抄』の郷名比定地による〈千年村〉データベースについて説明します。
  
本プロジェクトは、千年以上にわたり、度重なる自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が持続的に営まれてきた集落・地域を〈千年村〉と規定し、その収集、調査、公開、顕彰、交流のプラットフォームです。ここでは、その収集にあたり、その基礎として当運動体が作成した〈千年村〉データベースについて説明します。
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私たちは〈千年村〉を全国からひろく収集するために、ひとまず平安期文献『和名類聚抄』(1)に記載される古代地名とそれら古代地名を現在地名へと比定した既往成果を用い、それを空間的にプロットしました。主な既往参考資料は『角川日本地名大辞典』(1978-1990、角川書店)です。これら資料が平安期、要は今から約千年前の地域名の状態を網羅的に知ることができる文献です。しかしながら『和名類聚抄』の郷名比定地=すべての〈千年村〉ではありません。このデータベースが呼び水になって、新たな資料や情報が蓄積され、さらに精緻な千年村マップができあがることを期待しています。
 
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〈千年村〉を全国からひろく収集するために、平安期文献『和名類聚抄』(1)に記載される古代地名とそれら古代地名を現在地名へと比定した既往成果を用いています。その主参考資料として、『角川日本地名大辞典』を用いています。『角川日本地名大辞典』(2)には、『和名類聚抄』記載の古代地名の現在比定地に関する先行研究がまとめられています。この記述を全国的に見てみると、古代地名に比定される現在地が、以下の7つに分類されることがわかります。
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さて、『角川日本地名大辞典』(2)には、『和名類聚抄』記載の古代地名の現在比定地に関する先行研究がまとめられています。この記述を全国的に見てみると、古代地名に比定される現在地が、以下の7つに分類されることがわかります。
  
 
'''1.単一の大字に比定される'''
 
'''1.単一の大字に比定される'''
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本プロジェクトでは、上記の分類のうち、1と2、─現在の行政区画・大字に比定されるもの、を地図上に青色の円として表示しています。この表示に関しましては、比定地の可視化のみを目的としたもので、この表示が示す領域やその中心などには特に意味がない、ということに注意ください。
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本プロジェクトでは、上記の分類のうち、1と2、─現在の行政区画・大字に比定されるものを地図上に表示しています。その数は『和名類聚抄』記載の郷名数3986中の1977件であり、約半数となっています。現在においても比定できていない地域も多くあります。
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データベースのマップ表示に関しましては、可視化を第一の目的としたもので、この表示が示す領域やその中心に大きな意味はなく、めやすとお考えください。
  
このデータベースは、〈千年村〉のすべてではありません。私たちは、このデータベースが呼び水となって、さらなる〈千年村〉の発見や報告がもたらされることを期待しています。
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私たちは、このデータベースが呼び水となって、さらなる〈千年村〉の発見や報告がもたらされることを期待しています。
  
  
[[『和名類聚抄』の郷名から見つける|全国の〈千年村〉の地図をみる]]
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*[[地図からみつける]]
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*[[『和名類聚抄』の郷名からみつける]]
  
  

2017年7月19日 (水) 02:39時点における最新版

本プロジェクトは、千年以上にわたり、度重なる自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が持続的に営まれてきた集落・地域を〈千年村〉と規定し、その収集、調査、公開、顕彰、交流のプラットフォームです。ここでは、その収集にあたり、その基礎として当運動体が作成した『和名類聚抄』の郷名比定地による〈千年村〉データベースについて説明します。

私たちは〈千年村〉を全国からひろく収集するために、ひとまず平安期文献『和名類聚抄』(1)に記載される古代地名とそれら古代地名を現在地名へと比定した既往成果を用い、それを空間的にプロットしました。主な既往参考資料は『角川日本地名大辞典』(1978-1990、角川書店)です。これら資料が平安期、要は今から約千年前の地域名の状態を網羅的に知ることができる文献です。しかしながら『和名類聚抄』の郷名比定地=すべての〈千年村〉ではありません。このデータベースが呼び水になって、新たな資料や情報が蓄積され、さらに精緻な千年村マップができあがることを期待しています。

さて、『角川日本地名大辞典』(2)には、『和名類聚抄』記載の古代地名の現在比定地に関する先行研究がまとめられています。この記述を全国的に見てみると、古代地名に比定される現在地が、以下の7つに分類されることがわかります。

1.単一の大字に比定される

2.複数の大字に比定される

3.市域に比定される

4.河川流域など複数の市域にまたがる範囲に比定される

5.比定に関する説が異なる

6.比定地は未詳とされる

7.比定地に関する記述がない


本プロジェクトでは、上記の分類のうち、1と2、─現在の行政区画・大字に比定されるものを地図上に表示しています。その数は『和名類聚抄』記載の郷名数3986中の1977件であり、約半数となっています。現在においても比定できていない地域も多くあります。 データベースのマップ表示に関しましては、可視化を第一の目的としたもので、この表示が示す領域やその中心に大きな意味はなく、めやすとお考えください。

私たちは、このデータベースが呼び水となって、さらなる〈千年村〉の発見や報告がもたらされることを期待しています。



◆◆◆補注◆◆◆

(1)平安期文献『和名類聚抄』、源順著、931-938成立か。『和名類聚抄』は、古代律令国家が各地を国-郡-郷で管理していた時代の地名を記載する。

(2)『角川日本地名大辞典』は、日本全国の地名、その由来・沿革とその地の歴史を、都道府県ごとにまとめた辞書。全49巻、別冊2巻で、1978-1990年にかけて出版された。