「第6回千年村大会 日本の村の千年・百年・十年」の版間の差分
1行: | 1行: | ||
イベントは終了しました。[[#開催レポート|こちら]]から開催レポートをご覧いただけます。 | イベントは終了しました。[[#開催レポート|こちら]]から開催レポートをご覧いただけます。 | ||
− | + | ---- | |
==第6回千年村大会/今和次郎『日本の民家』刊行100周年記念「日本の村の千年・百年・十年」== | ==第6回千年村大会/今和次郎『日本の民家』刊行100周年記念「日本の村の千年・百年・十年」== | ||
2024年1月25日 (木) 11:51時点における最新版
イベントは終了しました。こちらから開催レポートをご覧いただけます。
目次 |
第6回千年村大会/今和次郎『日本の民家』刊行100周年記念「日本の村の千年・百年・十年」
日時
2022年3月21日(月・祝)13:00開始 18:00終了
場所
zoomを使ったオンライン開催
主催
千年村プロジェクト
共催
科研若手研究「極小集落のレジリエンスをめぐる歴史/公共民俗学的研究」(代表:金子祥之)
趣旨
1922年に出版された今和次郎『日本の民家 田園生活者の住家』(鈴木書店)は、今年で刊行100周年を迎えます。これを記念して、第6回千年村大会では「日本の村の千年・百年・十年」と題して日本の村の持続性について考えます。
千年村プロジェクトは東日本大震災を契機に活動を開始しましたが、その前身は『日本の民家』の再訪にあります。すなわち、今和次郎が訪れた民家や集落のおよそ百年の営みを観察する旅から、より長期の千年の営みを考察するプロジェクトが生まれました。さらに、千年村プロジェクトの直接の契機となった東日本大震災からは十年以上が経過しました。
このことを踏まえ、今大会では、日本の集落をフィールドにする研究者の方々と一緒に、「自然や社会の変動に対して、集落はいかに粘り強く持続しうるか」について、千年・百年・十年の異なるタイムスパンから議論したいと思います。いま私たちが直面するパンデミックという出来事も、長い歴史の中で繰り返されてきました。百年や千年の長い時間には、私たちの困難に通ずる多くの経験が蓄積されているはずです。第2部では、各認証〈千年村〉からこの一年の活動報告もあります。この先の十年・百年・千年を考える機会にしたいと思います。
是非ご参加ください。
プログラム
第一部:「日本の村の千年・百年・十年」
- 司会:林憲吾(東京大学)
13:00-13:10 〈千年村〉プロジェクトについて・趣旨説明:林憲吾
13:10-13:50 発表① 瀝青会から千年村へ:中谷礼仁(早稲田大学)+鈴木明世(北海道博物館)+高橋大樹(株式会社ランドスケープデザイン)
13:50-14:30 発表② 津波のあいだを生きる村―しかし生きているのは何だろうか:青井哲人(明治大学)
14:30-14:40 休憩
14:40-16:00 パネルディスカッション:講演者+菊地暁(京都大学)
16:00-16:15 休憩
第二部:千年村交流会
- 司会:福島加津也(東京都市大学)
16:15-17:15
- (1)麻生(茨城県行方市麻生)
- (2)山田井(三重県津市大里睦合町山田井)
- (3)岸(東京都武蔵村山市岸)
- (4)2021年度行方市疾走調査報告(千年村プロジェクト学生チーム)
17:15-17:55 意見交換
17:55-18:00 閉会挨拶:木下剛(千葉大学)
※お知らせ 2022.3.19
新型コロナウイルスならびに2022年3月16日夜間に発生し た福島沖を震源とする強い地震の影響で,発表者を一部変更しております。
開催レポート
2022年3月21日に、第6回千年村大会「日本の村の千年・百年・十年」がオンラインで催行されました!200名を上回る参加申込があり、また当日は大変多くの方にご参加頂き盛況のうちに終えることができました。以下イベントを順にレポートしていきます。
第一部:「日本の村の千年・百年・十年」
- 司会:林憲吾(東京大学)
13:00-13:10 〈千年村〉プロジェクトについて・趣旨説明:林憲吾
13:10-13:50 発表① 瀝青会から千年村へ:中谷礼仁(早稲田大学)+鈴木明世(北海道博物館)+高橋大樹(株式会社ランドスケープデザイン)
13:50-14:30 発表② 津波のあいだを生きる村―しかし生きているのは何だろうか:青井哲人(明治大学)
14:30-14:40 休憩
14:40-16:00 パネルディスカッション:講演者+菊地暁(京都大学)
はじめに、第一部司会の林憲吾先生より本大会の趣旨説明ならびに <千年村>についての説明がありました。本大会のタイトルである「日本の村の千年・百年・十年」は、今和次郎著「日本の民家」刊行から100年であることと、千年村プロジェクトが2011年の東日本大震災をきっかけにはじまり10年間活動を行ってきたことに由来することをご説明頂きました。
最初の発表では、瀝青会の活動から現在に至るまでの活動を中谷先生、鈴木明世さん(建築史研究者)、高橋大樹さん(株式会社ランドスケープデザイン)によりご紹介頂きました。
瀝青会では1922年に公開された今和次郎の「日本の民家」を再訪し、その後の変化を確認する活動をしてきました。一方、千年村は938年に公開された和名類聚抄の郷村集落をプロットして地域集落の調査を行ってきました。これらの研究活動は、一見すると異なる取り組みに聞こえますが、実は瀝青会も千年村も何かの先行事例を見て、現地に行き確認することに共通するものがあります。そこに行ってみて初めて分かることにこれらの研究の独自性があり面白いポイントです。
鈴木明世さんからはなぜ「千年」という単位に注目するのか、高橋大樹さんからは千葉県の大字領域の研究について発表いただき、これまでの千年村プロジェクトの活動をご紹介頂きました。
次に、明治大学の青井哲人先生に「津波のあいだを生きる村―しかし生きているのは何だろうか」と題して、岩手県大船渡市三陸町綾里地の調査、19世紀の河川流域の研究、福島アトラスプロジェクトの3つの事例について発表して頂きました。千年村プロジェクトとはまた少し別角度で生存環境のセットを捉えるプロジェクトの数々は、目から鱗のお話ばかりでした。
第一部最後のプログラムであるパネルディスカッションでは、京都大学の菊池暁先生に口火を切って頂き、千年村プロジェクトの10年間の活動についてのディスカッションがなされました。慶應大学の石川初先生からは瀝青会での甲州街道調査や内郷村調査についてプレゼンテーションをして頂きました。
ディスカッションでは、早稲田大学OBの方々や京都府立大学の松田法子さんらを中心に議論が展開されていきました。特に、早稲田大学OBの方々による当時のお話は大変興味深いものでした。
千年村候補地を抽出する上で重要な文献である和名類聚抄は、地名の数が7-800記載されていることからすべて現地訪問を目指していた中谷先生がおそれをなし、当時は評判が悪かったそうですが、地質図にプロットした時に地質の変わり目に地名がプロットされていたことが大きな発見となったそうです。また、当時何気なく発言した事柄が、プロジェクトを進める上で一つのブレイクスルーとして取り上げられており、記録を残すことがいかに重要かという教訓には、自身の今後の研究活動の態度として学ぶことがありました。
ー-----
第二部:千年村交流会
- 司会:福島加津也(東京都市大学)
16:15-17:15
- (1)麻生(茨城県行方市麻生)
- (2)山田井(三重県津市大里睦合町山田井)
- (3)岸(東京都武蔵村山市岸)
- (4)2021年度行方市疾走調査報告(千年村プロジェクト学生チーム)
17:15-17:55 意見交換
17:55-18:00 閉会挨拶:木下剛(千葉大学)
第二部では、千年村交流会が行われました。認証千年村(岸地区・山田井地区・)の直近の取り組みや、学生による今年度の研究活動の発表が行われました。その後、発表者を中心として意見交換会が行われました。
昨年は麻生地区においては馬出し祭り/大麻神社大祭が、岸地区は稲作が中止となり、どの地区も新型コロナウィルス感染拡大による活動自粛を余儀なくされたことが報告されました。一方で、感染予防対策を十分に講じて成人式を催行したり、自治会の活動を回復させたりと、ままならない情勢の中、人と人とが集まる場を絶やさないようにとした動きも徐々に現れてきたそうです。地域コミュニティの希薄化が懸念される状況下においてそれぞれの地区の取り組みをご紹介頂きました。
学生の立場として、先行きが見通せない困難な情勢が続いており、調査を十分にできない状況かつ地域の方々にご迷惑をおかけしないようにと意識的でしたが、皆さんのお話を聞いて、今後は積極的に連携して何かできればと思います。
最後に、木下先生より閉会のご挨拶を頂きました。千年村活動は、さしあたって「千年」という単位を目安にしてきて取り組んできたが、千年の歴史がない地域においても、これから千年の歴史を紡ぐにはどうしたら良いかを考えることが大事で、そうした時に、これまで千年続いてきた地域の理由や情報はこれからの千年を目指す地域にとって有用である。とお話を頂きました。
【会を終えて】
瀝青会や千年村プロジェクトの活動について、これまで部分的に話を聞くことがあり、知識として「過去あったこと」と捉えていました。しかし、本大会を通して瀝青会から続く千年村活動の一連の取り組みを鮮やかに捉えることができ、「今、自分がどこにいるのか」をなんとなく理解した気がします。早稲田大学OBである西吉永一さんの「これほどまで大きな研究となるとは思ってもいなかった」というご発言や、石垣敦子さんの「今、自分たちが研究していること自体に大きな意味がある」という言葉に勇気を頂きました。これからの自分たちの研究活動が、未来に希望を与えるもので在りたいと思います。