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「「日本荘園データベース」の荘園比定地による荘園地プロットの扱いについて」の版間の差分

 
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ここでは〈千年村〉収集の延長線上にある活動として行った荘園地プロットについて説明します。
 
ここでは〈千年村〉収集の延長線上にある活動として行った荘園地プロットについて説明します。
  
===概略===
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==プロットの概略==
私たちはさらなる〈千年村〉候補地収集のため、古代・中世に貴族・大寺院の私有地として展開した荘園に着目しました。そしてその現在地を全国的に把握するために、国立歴史民俗博物館「日本荘園データベース」(1)に掲載された荘園とその比定地情報を用い、これを現在の地図上へとプロットしました。
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私たちはさらなる〈千年村〉候補地収集のため、古代・中世に貴族・大寺院の私有地として展開した荘園に着目しました。
<br>これら荘園は古代~中世まで幅広い年代のものを含みますが、私たちはその中から〈千年村〉に匹敵する優れた集落・地域が発見・報告されることを期待しています。
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その現在地を全国的に把握するため、国立歴史民俗博物館「日本荘園データベース」(1)に掲載された荘園の比定地情報を基本として、現在の地図上へとプロットしました。
  
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ここでプロットされた荘園は古代~中世まで幅広い年代のものを含んでいます。
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*プロットは「日本荘園データベース」の比定地情報全8975件から、現在地を大字以下で特定可能な4963件について行いました。大字以下でプロットできなかった荘園のうち、研究上著名な荘園については『講座日本荘園史』(2)より343件を追加プロットしました。
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*上記条件を満たせず、現在地をプロットできなかった荘園は3770件でした。一覧は[[現在地に比定できなかった荘園・他荘園と重複する荘園一覧|こちら]]を参照してください。
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*地図上に示されたプロットは、典拠となるデータベースに記載された比定地の中から代表点一か所を示したものです。当時の荘園中心地を示すものではありません。
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*荘園のプロット位置についてのご提案がありましたら、本ウェブサイト内「コメント・情報提供」ページに情報をお寄せください。定期的にアップデートする予定です(アップデートにあたっては典拠先もしくは個人名等の典拠者情報が必要になります)。
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より詳細なプロットの説明につきましては以下をご覧ください。
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==プロットの詳細説明==
 
===これまでの研究成果との関係===
 
===これまでの研究成果との関係===
 
さて、荘園の現在地を地図上に示す試みはこれまでも行われてきました。<br>
 
さて、荘園の現在地を地図上に示す試みはこれまでも行われてきました。<br>
代表的なものとしては竹内理三『荘園分布図』上・下巻(2)があります。これは戦前に全国の荘園を収集しその情報をまとめた清水正健『荘園志料』(3)を基に、広域地図上に荘園の位置と関連集落を示した成果です。<br>
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代表的なものとしては竹内理三『荘園分布図』上・下巻(3)があります。これは戦前に全国の荘園を収集しその情報をまとめた清水正健『荘園志料』(4)を基に、広域地図上に荘園の位置と関連集落を示した成果です。<br>
また、国立歴史民俗博物館「日本荘園データベース」では『荘園志料』を主な参照元としつつ、古文書の記述や地名辞典の成果を反映して補完・修正が行われ全8975の荘園の情報をまとめています。そして、1995年に刊行されたCD-ROM版(吉川弘文館)では荘園の位置を市町村単位で地図上に示しています。
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また、「日本荘園データベース」では『荘園志料』を主な参照元としつつ、古文書の記述や地名辞典の成果を反映して補完・修正が行われ全8975の荘園の情報をまとめています。そして、1995年に刊行されたCD-ROM版(吉川弘文館)では荘園の位置を市町村単位で地図上に示しています。
  
 
これらはいずれも広域地図上で荘園の大略の位置を示すものでした。
 
これらはいずれも広域地図上で荘園の大略の位置を示すものでした。
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*【参考市町村】:国立歴史民俗博物館が荘園の所在に関係すると考えられる市町村名を一つ挙げたもの(1992年時点)
 
*【参考市町村】:国立歴史民俗博物館が荘園の所在に関係すると考えられる市町村名を一つ挙げたもの(1992年時点)
 
*【明治村字名】:『荘園志料』が比定地としてあげる明治20年代以前の村や字の名称を記載したもので、近世の村名に通じるものが多い。
 
*【明治村字名】:『荘園志料』が比定地としてあげる明治20年代以前の村や字の名称を記載したもので、近世の村名に通じるものが多い。
*【地名辞典】:『荘園志料』、『角川日本地名大辞典』(4)、『日本歴史地名大系』(5)、『平凡社大百科事典』(6)によって得られた荘園の立地・比定地。(一部【備考】の項目にも記述あり)
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*【地名辞典】:『荘園志料』、『角川日本地名大辞典』(5)、『日本歴史地名大系』(6)、『平凡社大百科事典』(7)によって得られた荘園の立地・比定地。(一部【備考】の項目にも記述あり)
  
  
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<br>22:比定が推測の域を出ない
 
<br>22:比定が推測の域を出ない
  
本プロジェクトでは、上記の分類のうち00~10、現在の行政区画・大字およびそれに近似する単位の地域施設名に関連付けられるものを地図上に表示しています。その数は、「日本荘園データベース」掲載の荘園8975のうち4963件であり、約半数となっています。
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本プロジェクトでは、上記の分類のうち00~10、現在の大字(または大字単位の地域施設名)に関連付けられるものを地図上に表示しています。その数は、「日本荘園データベース」掲載の荘園8975のうち4963件であり、約半数となっています。
 
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さらに、研究上著名な荘園の情報をまとめた『講座日本荘園史』第5~10巻(7)を用いて、「日本荘園データベース」に掲載がない、または上記手順で地図上に表示できなかった著名な荘園343件について、プロットの補完を行いました。
 
さらに、研究上著名な荘園の情報をまとめた『講座日本荘園史』第5~10巻(7)を用いて、「日本荘園データベース」に掲載がない、または上記手順で地図上に表示できなかった著名な荘園343件について、プロットの補完を行いました。
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<sub>(1)「日本荘園データベース」は国立歴史民俗博物館によって1993年に公開されたデータベースで、全8975件の荘園について、それぞれの所在や荘園領主、史料出典、などの主要情報を検索・表示するもの。現在は国立歴史民俗博物館のウェブサイトにて公開されており(https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/soue/db_param) 、主要部分については、国立歴史民俗博物館資料調査報告書6「日本荘園データ」(全2冊)として刊行されているほか、地図情報等の入ったCD-ROM版も1995年に吉川弘文館から刊行されている。</sub>
 
<sub>(1)「日本荘園データベース」は国立歴史民俗博物館によって1993年に公開されたデータベースで、全8975件の荘園について、それぞれの所在や荘園領主、史料出典、などの主要情報を検索・表示するもの。現在は国立歴史民俗博物館のウェブサイトにて公開されており(https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/soue/db_param) 、主要部分については、国立歴史民俗博物館資料調査報告書6「日本荘園データ」(全2冊)として刊行されているほか、地図情報等の入ったCD-ROM版も1995年に吉川弘文館から刊行されている。</sub>
<br><sub>(2)著者の竹内理三氏は、当時地名辞典が盛んに編纂されていたことから、地名辞典等の成果によって分布図が更新されていくことを望んでいた。(『荘園分布図』上巻p.3より。)</sub>
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<br><sub>(2)『講座日本荘園史』は、1989年から2005年にかけて吉川弘文館より出版された。第5巻から第10巻では各国別に国内の荘園の概要と、研究上重要で著名な荘園について個別的叙述がなされている。</sub>
<br><sub>(3)清水正健『荘園志料』(帝国出版社、1933年)、水戸出身の歴史学者である清水正健が、主に彰考館に所蔵された古文書・旧記録から荘園名を収集し、各荘園の起源・沿革をまとめた著作。比定地に関しては各地の国誌・郡郷記録に記載された地名と荘園名を照合し、明治以前の村名を充てている。</sub>
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<br><sub>(3)竹内理三『荘園分布図』上・下巻、(吉川弘文館、1975-76)。著者の竹内理三氏は、当時地名辞典が盛んに編纂されていたことから、地名辞典等の成果によって分布図が更新されていくことを望んでいた。(『荘園分布図』上巻p.3より。)</sub>
<br><sub>(4)『角川日本地名大辞典』は、日本全国の地名、その由来・沿革とその地の歴史を、都道府県ごとにまとめた辞書。全49巻、別冊2巻で、1978-1990年にかけて角川書店より出版された。</sub>
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<br><sub>(4)清水正健『荘園志料』(帝国出版社、1933年)、水戸出身の歴史学者である清水正健が、主に彰考館に所蔵された古文書・旧記録から荘園名を収集し、各荘園の起源・沿革をまとめた著作。比定地に関しては各地の国誌・郡郷記録に記載された地名と荘園名を照合し、明治以前の村名を充てている。</sub>
<br><sub>(5)『日本歴史地名大系』は、1979年から2005年にかけて平凡社より刊行された地名辞典。47都道府県と京都市の地名を掲載した48巻と索引2巻の全50巻からなる。</sub>
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<br><sub>(5)『角川日本地名大辞典』は、日本全国の地名、その由来・沿革とその地の歴史を、都道府県ごとにまとめた辞書。全49巻、別冊2巻で、1978-1990年にかけて角川書店より出版された。</sub>
<br><sub>(6)『大百科事典』は、平凡社より発刊された百科事典。初版は1931-35年にかけて出版された。最新版は2007年に発刊された『改訂新版 世界大百科事典』で、全34巻(本巻30巻・索引1巻・地図帳2巻・百科便覧1巻)からなる。</sub>
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<br><sub>(6)『日本歴史地名大系』は、1979年から2005年にかけて平凡社より刊行された地名辞典。47都道府県と京都市の地名を掲載した48巻と索引2巻の全50巻からなる。</sub>
<br><sub>(7)『講座日本荘園史』は、1989年から2005年にかけて吉川弘文館より出版された。第5巻から第10巻では各国別に国内の荘園の概要と、研究上重要で著名な荘園について個別的叙述がなされている。</sub>
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<br><sub>(7)『大百科事典』は、平凡社より発刊された百科事典。初版は1931-35年にかけて出版された。最新版は2007年に発刊された『改訂新版 世界大百科事典』で、全34巻(本巻30巻・索引1巻・地図帳2巻・百科便覧1巻)からなる。</sub>

2021年3月23日 (火) 23:03時点における最新版

本プロジェクトでは、千年以上にわたり、度重なる自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が持続的に営まれてきた集落・地域を〈千年村〉と規定し、その収集、調査、公開、顕彰、交流のプラットフォームとして活動を行ってきました。 ここでは〈千年村〉収集の延長線上にある活動として行った荘園地プロットについて説明します。

目次

プロットの概略

私たちはさらなる〈千年村〉候補地収集のため、古代・中世に貴族・大寺院の私有地として展開した荘園に着目しました。

その現在地を全国的に把握するため、国立歴史民俗博物館「日本荘園データベース」(1)に掲載された荘園の比定地情報を基本として、現在の地図上へとプロットしました。

ここでプロットされた荘園は古代~中世まで幅広い年代のものを含んでいます。

  • プロットは「日本荘園データベース」の比定地情報全8975件から、現在地を大字以下で特定可能な4963件について行いました。大字以下でプロットできなかった荘園のうち、研究上著名な荘園については『講座日本荘園史』(2)より343件を追加プロットしました。
  • 上記条件を満たせず、現在地をプロットできなかった荘園は3770件でした。一覧はこちらを参照してください。
  • 地図上に示されたプロットは、典拠となるデータベースに記載された比定地の中から代表点一か所を示したものです。当時の荘園中心地を示すものではありません。
  • 荘園のプロット位置についてのご提案がありましたら、本ウェブサイト内「コメント・情報提供」ページに情報をお寄せください。定期的にアップデートする予定です(アップデートにあたっては典拠先もしくは個人名等の典拠者情報が必要になります)。


より詳細なプロットの説明につきましては以下をご覧ください。

プロットの詳細説明

これまでの研究成果との関係

さて、荘園の現在地を地図上に示す試みはこれまでも行われてきました。
代表的なものとしては竹内理三『荘園分布図』上・下巻(3)があります。これは戦前に全国の荘園を収集しその情報をまとめた清水正健『荘園志料』(4)を基に、広域地図上に荘園の位置と関連集落を示した成果です。
また、「日本荘園データベース」では『荘園志料』を主な参照元としつつ、古文書の記述や地名辞典の成果を反映して補完・修正が行われ全8975の荘園の情報をまとめています。そして、1995年に刊行されたCD-ROM版(吉川弘文館)では荘園の位置を市町村単位で地図上に示しています。

これらはいずれも広域地図上で荘園の大略の位置を示すものでした。 そこで、本プロットでは、これらの成果をもとに、より詳細で現在の地域の生活・生産の単位となっている大字と荘園とを結びつけることを目指しました。

プロットの方法

大字単位で荘園の位置を地図に示すという目標のために、「日本荘園データベース」に記載された情報のうち比定地にあたる項目として、以下を抽出しました。

  • 【参考市町村】:国立歴史民俗博物館が荘園の所在に関係すると考えられる市町村名を一つ挙げたもの(1992年時点)
  • 【明治村字名】:『荘園志料』が比定地としてあげる明治20年代以前の村や字の名称を記載したもので、近世の村名に通じるものが多い。
  • 【地名辞典】:『荘園志料』、『角川日本地名大辞典』(5)、『日本歴史地名大系』(6)、『平凡社大百科事典』(7)によって得られた荘園の立地・比定地。(一部【備考】の項目にも記述あり)


これらの情報を基に、市町村合併や明治以降の行政区画の変遷等を考慮して現在の地名と照らし合わせると、以下のように分類されることが分かります。

00:参考市町村+明治村字名が現在の住所に一致
01:参考市町村名を変更(合併による名称変更)
02:参考市町村名を変更(隣接する市町村)
03:明治村字名を一部変更(同音異字等)
04:明治村字名を一部変更(上下/東西南北/町村宿等の有無)
05:明治村字名を一部変更(合併等による固有名詞の付与)
06:地名辞典で大字レベルに比定
10:施設名等に明治村字名が残る
20:明治村字名・大字レベルで比定されていない
21:比定の説が複数ある
22:比定が推測の域を出ない

本プロジェクトでは、上記の分類のうち00~10、現在の大字(または大字単位の地域施設名)に関連付けられるものを地図上に表示しています。その数は、「日本荘園データベース」掲載の荘園8975のうち4963件であり、約半数となっています。
さらに、研究上著名な荘園の情報をまとめた『講座日本荘園史』第5~10巻(7)を用いて、「日本荘園データベース」に掲載がない、または上記手順で地図上に表示できなかった著名な荘園343件について、プロットの補完を行いました。

プロット成果の取り扱いについて

プロットの示す領域やその中心は、「日本荘園データベース」に記載された比定地の中から代表点一か所を無作為に設定したものであり、めやすとしてお考え下さい。
また、『講座日本荘園史』による荘園のプロットについては、著名な荘園を漏れなく表示することを目的としたため、大字単位での比定記述がない場合でも大略の位置が把握できる場合は地図上に示しました。そのため位置については参考としてお考えください。


最後に

現在においても比定されていない荘園も多くあります。私たちは今後の研究の進展を踏まえてこの荘園地プロットが追加・修正され、新たな優れた集落・地域が発見・報告されることを期待しています。




◆◆◆補注◆◆◆

(1)「日本荘園データベース」は国立歴史民俗博物館によって1993年に公開されたデータベースで、全8975件の荘園について、それぞれの所在や荘園領主、史料出典、などの主要情報を検索・表示するもの。現在は国立歴史民俗博物館のウェブサイトにて公開されており(https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/soue/db_param) 、主要部分については、国立歴史民俗博物館資料調査報告書6「日本荘園データ」(全2冊)として刊行されているほか、地図情報等の入ったCD-ROM版も1995年に吉川弘文館から刊行されている。
(2)『講座日本荘園史』は、1989年から2005年にかけて吉川弘文館より出版された。第5巻から第10巻では各国別に国内の荘園の概要と、研究上重要で著名な荘園について個別的叙述がなされている。
(3)竹内理三『荘園分布図』上・下巻、(吉川弘文館、1975-76)。著者の竹内理三氏は、当時地名辞典が盛んに編纂されていたことから、地名辞典等の成果によって分布図が更新されていくことを望んでいた。(『荘園分布図』上巻p.3より。)
(4)清水正健『荘園志料』(帝国出版社、1933年)、水戸出身の歴史学者である清水正健が、主に彰考館に所蔵された古文書・旧記録から荘園名を収集し、各荘園の起源・沿革をまとめた著作。比定地に関しては各地の国誌・郡郷記録に記載された地名と荘園名を照合し、明治以前の村名を充てている。
(5)『角川日本地名大辞典』は、日本全国の地名、その由来・沿革とその地の歴史を、都道府県ごとにまとめた辞書。全49巻、別冊2巻で、1978-1990年にかけて角川書店より出版された。
(6)『日本歴史地名大系』は、1979年から2005年にかけて平凡社より刊行された地名辞典。47都道府県と京都市の地名を掲載した48巻と索引2巻の全50巻からなる。
(7)『大百科事典』は、平凡社より発刊された百科事典。初版は1931-35年にかけて出版された。最新版は2007年に発刊された『改訂新版 世界大百科事典』で、全34巻(本巻30巻・索引1巻・地図帳2巻・百科便覧1巻)からなる。